偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
♧騎士♧
「……だから、山口 悠斗って名前で、チェックインしてるはずなんだ。どこの部屋なのか、早く教えてくれ!」
智史が男性のフロントクラークに詰め寄っていた。
「申し訳ありません。お客様のことに関しましては、私どもは申し上げられません」
だが、丁寧なお辞儀とともに拒絶される。
「緊急事態なのよ!友達が連れ込まれそうになってるのよっ」
麻琴が、より興奮して迫る。
「そういうことでしたら、まず警察にご連絡ください。警察からの要請であれば、私どももご協力できますので」
クラークが困り顔で対応する。そういうマニュアルなのだ。
「そんな悠長な……一刻を争うのよっ!」
麻琴はイライラした声で食い下がる。
「渡辺、仕方ない……警察に連絡する」
智史がスマホを取り出した。
すると、そのとき、フロントクラークに電話が入った。
「……えっ、女性がエレベーターの前で倒れられた?」
受話器を取った別のクラークの緊迫した声が聞こえてきた。