偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
医者がドアを開けに行く。
すると、なだれ込むような勢いて智史が入ってきた。
「……稍っ!」
借りてきた体温計と家庭用血圧計を押しつけるように目の前にいた男に渡し、ベッドの脇に突っ立っていた山口を押しのけ、智史はベッドの上の稍に駆け寄った。
「さ…さとくん」
稍が弱々しいながらも笑顔になり、智史に手を伸ばす。
「稍……やっと、見つけた……」
智史が搾り出すようなせつない声でつぶやくと、稍をぎゅーっと抱きしめた。
ホッとした稍は全身を智史に預けた。
「アホか、おまえ……おれに黙って、なんで山口なんかと会うとんねん?心配するやないか」
言葉はキツいが、その口調は蕩けるように甘い。抱きしめた手で稍の頭をやさしく撫でている。
「……ごめん……ごめんな……さとくん……」
稍は愛する人の胸に自分の顔を埋めた。