偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……はいはい、ご主人。『感動の再会』を邪魔して悪いんだけど、奥さんのバイタルチェック、まだ途中なんだよね」
智史から体温計と家庭用血圧計を押しつけられた医者が苦笑している。
智史のあとから入ってきた麻琴は、チャコールグレーのスーツ姿の彼を見た。
シャークスキンの素材が光の加減で微妙な光沢を放っている。明るめのブラウンの髪に、灰緑色の瞳。
山口よりも十センチ近く背が高い。
智史とですら、彼の方がまだ五センチほど高いから一八五センチはあると思われる。
ヒールを履くと確実に一七〇センチを超える麻琴が見上げなければならない。
さらに、その日本人離れした顔立ちから、どう見てもパリコレとかのモデルにしか見えない。
「……それから『情けは人のためならず』ってほんとだね。回り回って僕のところに来たなぁ」
そう言って、彼は麻琴に向かって笑った。
三十代半ばの落ち着いた微笑みだった。