偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「あっ、そうか……ややちゃんの一つ前の名字が『八木』なのね?」
麻琴がやっと合点がいった、という顔をする。
「だからといって、稍はバツイチじゃないぞ。親が離婚して母方の姓の『八木』を選んだんだ」
智史が「なっ?」と稍を見て微笑む。
彼は「やぎやや」なんていう、へんてこりんな名前を社内でわが妻には絶対に名乗らせたくなかったから、こんなしちめんどくさいことをしたのだ。
「えっ……『八木』って……まさか……」
山口が呆然とした顔になる。
「やっと気づいたか、バカが。
……こいつは、四月にうちのチームに派遣で来てた『八木 梢』だよ」
「えええええぇーーーっ!?」
山口がムンクの顔になった。
「石井くんもとっくに気づいてるわよ。
『稍』って漢字を見て『梢』と似てるなと思って、ピンときたそうよ」
麻琴が呆れた口調で言った。