偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
そして、来週末はもう五月。会社はその直前から、ゴールデンウィークの大型連休に入る。
……正社員だったときは、正月休みやGWが来るのが待ち遠しくて仕方がなかったけど、派遣だと時給計算だから、まとまった休みがある月は給料が下がるんだよなぁ。
稍は憂鬱になって、遠い目をした。
会社の友人たちと、韓国やグァムやシンガポールなどへ旅行した日々は、今となっては昔の話だ。
彼女たちも今や子育てに忙しくて「旅行」と言えば家族旅行になっているであろうが。
「……ねぇ、ちょっといいかな?」
麻琴から呼ばれた。
青山から割り振られる仕事がハードでタイトであるにもかかわらず残業のできない稍を、麻琴は声をかけるタイミングまで気遣ってくれていた。
この「風貌」のせいで、仕事以外で稍に声をかける人はいない。麻琴くらいだ。
「人は見た目が九割どころか、お蕎麦と同じく十割だ」が稍の最新のポリシーとなった。
「あ…いいですよ……そろそろ一息入れようかな、とぼんやりしてたので」
稍は机の上の携帯マグを持ち上げた。
ほんの一瞬、麻琴がそれをじっと見たような気がしたが、すぐに目を離した。
青山も今は席を外しているからちょうどいい。
初めは隣で業務するのがあんなにイヤだったのに、今はさほどでもない。
稍自身も曖昧なところをすぐに聞けて便利だ、とさえ思えてきた。「慣れ」とは怖ろしい。
「あのね、今度の土曜日なんだけど……」