偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
(株)ステーショナリーネットは、この四月で創業二十周年を迎える。
それを記念して、わが国を代表する老舗ホテルに社内外の者を招き、記念パーティが開かれるのだ。しかも、会場は芸能人なんかの派手な結婚式でテレビ中継が入ったりする、美しい鳥の名がついた一番大きくて広い会場だ。
「こんな機会でもなければ、まず行けないところよ」
そう言って、麻琴は稍にパーティへの招待状を差し出した。
「でも……あたしは三ヶ月だけの派遣ですし」
稍はおずおずと固辞した。
「ええっ、契約は更新しないの?
こんなに期待されて仕事を任されてるのに?」
麻琴は、信じられない、という顔をした。
だが「事情があるかもしれないのに、踏み込み過ぎてしまったかな」と思い直して言った。
「でも、その三ヶ月の間にこんなパーティがあるなんて、それこそ滅多にないことじゃない?
……とにかく、もし、なにも予定がないのなら、ぜひ来てみてよ」
麻琴の勧めに、稍は仕方なく招待状を受け取った。中身を開けて、ホテルの場所を確かめる。
……最寄り駅は新橋だから、定期で行けるな。ビュッフェスタイルのパーティなら気兼ねなく、一食分浮かせられるチャンスかも。
来るべき薄給の五月に備えて、背に腹はかえられなかった。稍は算盤をパチンと弾いた。