偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
Epilogue

「渡辺さま、いらっしゃいませ。
そして……恭介さま、本日二度目のご来店、誠にありがとうございます」

カウンターの向こうの杉山が、にこやかに迎える。

艶やかな黒髪をオールバックにして、左耳にダイヤのピアスを輝かせた彼は、まだ二十代の半ばだが、すでにバーテンダーの世界大会で優勝している若手の有望株だ。

「どうやら、ホワイトナイトが無事に使命を果たしてご帰還、みたいですね。
『姫』とも再会できて言うことなし、じゃないですか?」

「ふざけんなよ、(かける)。あんなカクテルつくりやがって。目敏(めざと)いのは、おまえのじいさん譲りだな?」

松波が麻琴をカウンターのハイスツールにエスコートすると、その左隣に腰かけた。
彼が酒を覚えたのは「伝説のバーテンダー」として名を馳せた杉山の祖父のバーだ。

その縁で、杉山のことは彼がまだ酒も飲めない十代の頃から知っていた。祖父の手伝いをして下働きしていたからである。

「お客さまも、本日二度目のご来店ありがとうございます」

山口が気まずそうに麻琴の右隣のハイスツールに座る。

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