偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
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創業記念のパーティは、その老舗ホテルの一番大きな宴会場で催されていた。

受付を済ませた稍は、その会場へ一歩足を踏み入れたとたん、ぎらぎらと輝く巨大なシャンデリアに目を射抜かれた。一般庶民とはかけ離れた(きら)びやかな世界が、そこにはあった。

麻琴の言うとおりだった。こんな機会がなければ一生縁のない場所である。

この歳になると、友人や親類たちのホテルでの結婚式には何度も出席したが、ここは文字どおり「(ケタ)違い」な広さだ。

大きくて細長いテーブルの上には、すでに銀の器に盛られた美味(おい)しそうな料理が所狭しと並んでいた。温かいものは保温されていて、冷たいものは氷に囲まれている。

また、白木の大きなまな板がある所では寿司職人が寿司ネタの魚を捌いているし、大きな分厚い鉄板の脇ではコックコートの人が大きな塊のステーキ肉を切り分けていた。

さらに「うどん・そば」「ラーメン」と暖簾(のれん)の掛けられた屋台が設置されたコーナーからは、それぞれの出汁(だし)やスープの香りがこちらまで届いてくる。「できたて」を提供する準備が着々と整えられているのがわかる。

結婚式に招ばれたときの中途半端な温度の「宴会料理」とはレベル違いの配慮が見てとれた。

稍は、ムダな意地を張らずに来てよかった、と心底思った。

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