偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
Chapter1
♧再会♧
四月一日、ステーショナリーネットへ派遣社員として出社初日、黒のジャケットにタイトスカートの稍は、ゆりかもめに揺られていた。
ステーショナリーネット本社は、テレコムセンターのテナントのエリアに入居している。
一応、お台場の一部ではあるが「港区台場」ではなく「江東区青海」だ。
青海には倉庫街があり、そこにステーショナリーネットの流通配送センターがあるため、ほど近いここにオフィスを構えているのだ。
今まで「中央区兜町」の雑多な街並みにたどり着くまで、毎朝地獄のようなメトロの通勤ラッシュに揉まれてきた稍は、座れないにしても自分の周りに空間があることが、気兼ねなく吸える空気があることが、こんなにもストレスフリーなのかと思わざるを得なかった。
その反面……伊勢物語の「東下り」の気分も拭えない。
……京から東国へ逃れる在原業平と思われる「男」が、東国のジモティーの船頭に尋ねた「都鳥」ってゆりかもめだっけ?
そんなことをつらつら考えているうちに、ゆりかもめはテレコムセンター駅まで、稍を運んでくれた。駅直結のオフィスはありがたい。