偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「はぁ⁉︎……わかった。パパとトイレに行こう。もうちょっと、ガマンできるか?」

魚住が息子に問いかける。

しかし、大和はぶんぶんぶん、と首を振った。

「…………もれる」

絶体絶命の三文字が発された。

「えええぇっ⁉︎」

魚住が絶叫した。

ようやくトイレトレーニングの「努力」が実ってオムツが取れたと思ったが、やはりこういう場ではまだ必要だったか、と激しく後悔した。

「おまえ、もっと早くに言えよっ!」

しかし、幼い子どもの尿意は突然なのだ。
父親から怒られたのだと思った大和は、そのぷっくりしたくちびるをぶるぶると震わせた。

……しまった、ヤバい。

そう魚住が思ったときは、もう遅かった。
大和がすぅーっと、息を吸った。
ほんの一瞬、世界に静寂が訪れた。

だが、次の瞬間……

「ぅわあえぇーっ、ま…ままぁーあっ!
……ままぁーあっ!……ぅぎゃあえぇーっ!」

耳をつんざくような大音声で、大和が泣き叫びだした。

「ま…ままぁーあっ!……っきぃいいいーっ!
……もっ…もっ…もれるぅーっ!」

ウルトラ大怪獣たちを総動員させてしまった。
怪鳥が超音波を最大出力しているような、不快極まりない金切り声も混じっている。

< 92 / 606 >

この作品をシェア

pagetop