君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


いつもの赤いバスに乗って、いつもの指定席に座った。


やっぱり、この通路の境界線は簡単には超えられない。

隣に座りたいって、簡単に言えたらどんなにいいか。

窓から空を見上げて小さく息を吐いた。


『なーくん』

綺麗な声が俺の名を呼んで、顔を向けると

彼女がとても綺麗な顔で笑っていたから、俺も笑い返した。


『隣、行ってもいい…?』

恥ずかしそうに言う逢に、俺の脳は処理が追いつかず一瞬静止する。


『あ、ん…いいよ、おいで』

隣に置いていた荷物を足元へ退けると、逢は俺の隣へそっと移動してきた。

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