君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


膝に置いたリュックをぎゅっと抱いて『思ったより近いね』とはにかむ彼女が愛しい。

俺はずっと、この距離に居たい。

とかそんなん言いたくても言えなくて、ぐっと喉まで出た言葉を飲み込んだ。

『そうだね』

なんてありきたりで、何の変哲もない言葉を彼女は期待していたんだろうか。


そんなわけねぇよ…俺のバカ。


『なーくんは…今日、楽しかった?』

よそよそしく控えめに聞いてくる逢。


『…ん、すげぇ楽しかったよ。逢は俺とふたりで楽しかった?』


『…うん、すごく。すごく楽しかったよ』

口元に笑みを浮かべて髪を耳にかける仕草が、綺麗で思わず見とれてしまった。

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