君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。

真っ白で、ふわりふわりと舞う雪は、どこか君に似てて、けっこう好きだ。

「今年の初雪はいつだろうね」

「どうだろう、1月入らないと降らないかな」


「早く、雪が見たいなぁ」


独り言のようにも聞こえるその言葉に、少し目を伏せる。


“雪が綺麗で、私の真っ黒な心も、白くしてくれるでしょ”


前の世界で、彼女は泣きそうな顔をしてそう言っていた。

それに気付いていたのに、意気地がない俺は彼女に何か言うことも、抱きしめてやることも、一緒に泣いてやることさえ出来なかった。

あの時、華奢な肩を抱き寄せて「大丈夫」だとたった一言いうだけでもまた違う未来があったのかもしれない。

そうやって、何度も何度も後悔してきたのどけれど、どうやってもやり直しはできなかった。

でも、この世界なら……
二度目の、この世界なら。

< 234 / 359 >

この作品をシェア

pagetop