君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。

──夢を見た気がする。


ただそれだけで、内容は思い出せないのだけれど。

こんな経験を誰しも一度はしたことがあるだろう。


こんな日は、少しモヤモヤしてしまう。

そうやってそんな気持ちを抱えたまま朝の支度をする。

「いってきます」

母の声がリビングから聞こえて、次にドアの閉まることが鳴る。

いつものバスに乗ると、やっぱり変わらずそこには君が居た。

「おはよう、逢」

そう言いながら、通路を挟んで、隣の席に座る。


「…おはよ」

少し儚げな、いつもとは違う笑顔。


「……どした?、なんかあった?」

「ちょっとね…大丈夫。ありがと」


なんにも大丈夫に聞こえない。


久々に、そんな消えそうな彼女の笑顔を見た。

最近は楽しそうに笑ってたのに。



まだ、踏み込んじゃ行けないのかよ。

逢。


< 238 / 359 >

この作品をシェア

pagetop