君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。
その日も、こうやって、隣にいた。
こうやって、小指を繋いだ。
あの時の逢は、肩を上げて黙っていたけれど、今は握り返してくれる。
小指から、手繰り寄せて、絡めて、手をぎゅっと握る。
冬に攫われた体温は、こうしてまたふたり合わせたら暖かくなるだろう?
体も、心も。
「ねぇ那知?…今日はありがとう。楽しかった」
いつもよりも近い、上目遣い。
寒さで赤くなった鼻も頬も、可愛いとしか思えない。
「俺も楽しかった。ありがとう」
込み合っているバスの中で、小さく笑い合う。