君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


バスの中に俺の最寄りの名前が響いた時には、俺も逢も目は覚めていた。

「じゃあ、またな」

席から立ち上がって、ぽんぽんと2回だけ寂しそうな彼女の頭を撫でる。

「…うん、またね」


お金を払い、バスを降りた。

控えめに手を振っている逢を、バスの窓越しに見つめる。


動き始めたバスの中にいる彼女に微笑んで、手を振った。

彼女は頬を染めて嬉しそうに、けれどやっぱり少しだけ寂しそうに笑っていた。


「はぁ…さみぃ」

息を吐けば、白く空に上がってすぐに消えてしまう。

左耳の、銀色の雪の華。

すっかりと冷たくなった指で触れれば、きっと気のせいだけれど少し温かくなった気がした。


遠くから聖歌が聞こえてくる。

どこかでベルがなっている。


遠くに見える街は、いろんな色に光り輝いている。

けれど俺は、どんな色よりも…




この銀色が、一番綺麗に見えたんだ。


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