君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


「───那知、?」


「……、ん…」


この2ヶ月を、思い返していた俺を、逢の綺麗な声が呼ぶ。


教室の、教卓の横。

段差にふたり並んで座って、手をぎゅっと繋いでいた。


すぐ隣にいる彼女の頬を撫でて、そっとキスをする。

離れた唇で、小さく逢は呟いた。


「那知が、どこにもいなくなっちゃいそうで、怖い」


見つめる彼女の目が、今にも泣きだしそうなほど潤んでいるのは、それが本当に怖いからか。



今日でもう、最後だからか。


後者が、本命だろうなぁ…



「俺はずっと、逢の中にいるよ。逢の記憶の中にいる。離れても、逢の隣からいなくなっても。ずっと、ずっとだ」



今日は、雪がひどく降っている。

珍しく積もるのかもしれない。


前の世界の今日も、雪が降っていた。

悲しいほど儚く。


すぐに地面へ溶けて消えていく。


道の端っこにうっすらと積もって、雨が降ったかのように草花は濡れていた。

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