君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。
「わ、らっ、て」
彼女の振り絞るような声に、俺はきゅっと口角を上げた。
涙の味がする。
きっと、顔もぐちゃぐちゃだ。
「……ぁ、…く、ん」
必死に、君が、俺の頬に手を伸ばす。
それに触れた優しい手は、とても温かいのに…すごく、冷たくて。
ぎゅっとその手を握って頬を擦り寄せた。
「逢、逢……好きだよ」
彼女の唇が震える。
「もうな……、愛してる…逢…」
閉じかかった彼女の瞼に優しくキスを落としてそっと囁くと、彼女はとても幸せそうに笑った。
「…へへ、……わ、た……しも」
ポロポロと流れる俺の涙は逢の頬にあたって、彼女の涙と混ざりあう。
「……っ、逢っ……あう、」
遠くから救急車の音がする。
逢はもう、それさえ聞こえていないのかもしれない。
腕の中の彼女は、いつの間にか雪がやんだ空の光に目を細めて、ゆっくりと口を開いた。
「そ、らが、きれ…い、だね」
雲の隙間から見える小さな蒼空は、俺たちを優しく包み照らす。