青春日和。
家の前に着くと
「沙奈もあがれば?」
大智がそう言って自転車を停めた。
『あー、じゃあお邪魔しようかな。』
大智の家に入るのは中学校以来だ。
『お邪魔しまーす。』
「誰もおらんで。」
『あ、そうなの?』
「タオル持ってくるわ。」
大智の家に来るのは初めてじゃないけど、誰もいないのは初めてだった。
ニャー。
子猫が甘えてくる。
『ハチ。きみは今日からハチだよ。』
手のひらに子猫を乗せて遊んでいると、ふわっと頭にタオルをかけられた。
「ん。風邪ひく。」
『あ、ありがとう。』
大智は自分の部屋にハチを連れて行った。
大智の部屋は一年前と少し変わっていた。
壁のサッカーのポスターが剥がされ少し殺風景になっていた。
ちょっぴり悲しくなりながら私は大智が持ってきた温かいミルクをハチにあげた。
『美味しい?』
ハチは嬉しそうに全部飲んだ。
『ねぇ、ハチもう飲んじゃった。笑』
振り向くと上半身裸の大智が着替えていた。
『…///』
大智はなんにも気にしてないみたいだけど、目のやりどころに困ってしまう。
「沙奈服貸そうか?」
『い、いい。家そこだし大丈夫。ありがとう。』
ハチの方を向いて答える。
着替えた大智がハチを抱き上げる。
「かわいいな~。やっぱ猫は。」
『ね、いいなぁあたしも飼いたい。』
「いつでも見に来たらいいやん、向かいやねんから。なーハチ?」
猫とじゃれる大智の笑顔が幼い頃の大智みたいで、可愛かった。
ー
それからしばらくハチと遊んでいた。
『そろそろ帰ろうかな。』
「おー。」
あたしが立ち上がろうとした瞬間、大智の腕からハチがあたしの方に飛びついてきた。
『わっ、』
「あ、ぶなっ」
あたしは床に倒れる
その上にハチ
と大智。
『「…」』
大智に押し倒されたような状態になる。
顔が、近い…//
「…ハチ、大丈夫か?」
『…え、そっち?』
ドキッとしたのもつかの間、大智がハチを抱き上げた。
あたしはまだ鳴り止まない鼓動を隠すように、じゃあねと部屋を出た。
顔が熱いのは
ハチのせいだ。
ー