青春日和。
次の日は五十嵐くんと目も合わせられなくて、 避けるようにして過ごした。
朝から機嫌の悪い大智の方は、一体何があったんだろう?
『大智、一緒に帰ろう。』
「…おん。」
『ね、今日大智朝怒ってたね。なんかあったの?』
「…別に。(おまえのせいやし。)」
『あ、もしかして木更津くんと喧嘩した?』
「…いいや。(木更津じゃなくて五十嵐やし。) 」
『うーんじゃあハチと喧嘩したの?』
「…はぁ?笑」
沙奈といると、イライラしてても笑えてくる。
『あ、久々にハチ見たいな!家行っていい?』
「どーぞ。」
ー
大智の部屋を開けるとハチが飛び出してきた。
『わぁ、ハチー!大きくなったねぇ!』
数週間ぶりに見たハチは元気に大きくなっていた。
『かわいいー。』
「ハチ、おいで。」
大智にもすごく懐いていた。
『あたしも抱っこしたいー!』
それからハチとしばらくじゃれ合っていた。
『ねぇ宿題しよ?』
「俺もう学校でやった。」
『へ?なにそれずるーい。じゃあ手伝って。』
「はぁ…ったく、おまえは。 」
ー
「そうそう。なんや、結構解けるやん。」
『でしょ?五十嵐くんがねぇ、教えてくれたんだ。』
「…五十嵐?」
『ん?うん。この前。すっごく頭良くてびっくりしちゃった。』
「…そうなんや。」
『五十嵐くんって幼稚園から塾行ってたらしいよ!妹の里菜ちゃんもねぇ、』
「うっさい!!!」
五十嵐くん五十嵐くんってなんやねん…
俺は思わず大声を出してしまった。
『あ…ごめん。やっぱり、今日大智おかしいよ。あたし…帰るね。』
荷物をまとめて立ち上がって部屋を出ようとすると
大智に手を掴まれた。
『ん?大智?』
「…ごめん。」
そう言っていつの間にか
キスされた。
初めて
大智をこんなに近くに感じた。
ごめんと言われてから触れた唇は切なくて
胸がズキンと音を立てた。
それと同時に
ずっと守ってきた
何かが崩れてしまうような
音がした。
ー