輪廻ノ空-新選組異聞-
「な、何ですか」

少し距離置くように身体をずらした。

「二人きりやな。誰も助けてはくれへん」

けど、やり遂げるで、と真面目くさった顔と声で。

しばしポカーン。
でも、多分伊木さん自身、命をかけた役目なのだ。色々込み上げてきたんだと思う。

でも、そんな空気に呑まれてる場合じゃない。慌てて茶化した。

「八郎さんが言うと変な事をやり遂げようとしてるみたい」

気を付けないと、って付け足したら、伊木さんはハハッと笑って。

「真面目やってんけどな!蘭がそないに期待してんねやったら、応えな失礼やな!」

と言って、ガバッと横から抱きついてきた。

「おわっ」

思わず男前な悲鳴を上げたら、手で口を塞がれた。

「阿呆!聞かれたらどないするねや!」

小声だから必然的に顔が近い。
手首を掴んで離させ、すみません、と小声で謝るわたしの顔を、伊木さんはじっと見つめてきて。

それから、少し顔を傾けて近づいて…

キス阻止!!

ササッと上半身全体で逃げて避けた。

「ちっ」

「何を舌打ちしてんですか!だいたい恋人がいるのに、こんな浮気なことして良いと思ってるんですか!」

それにわたしは男だ!と小声で怒鳴る。

「この際、おなごや、をのこや関係あらへん。惚れてしもた言う気持ちが全部や」

……っ!
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