輪廻ノ空-新選組異聞-
伊木さんはわたしより背は低いけど、平均身長が150センチちょいじゃないの、というこの時代にあっては、まぁ高いと思う。近藤さんと同じぐらいかな。160センチぐらい。

普段はあんまり身長の差は気にならないけど…。わたしは今、女の髷だから…。差が大きくなって、申し訳ない。目立つのが一番駄目だから。

肩をつぼめるついでに、少し猫背に…。

なんて、歩きながらいかに自分を小さく見せるか試していて「挙動不審や」と、怒られてしまった。

ううっ、気をつける事がいっぱい。


外を歩き始めて最初に、屯所につなぎをつける隊士の確認をした。この隊士に文などの形で情報を書いて渡す。

三条小橋の横にある池田屋。
その小橋の池田屋側の西詰め、橋のかかる高瀬川沿い少し北に上がった所に莚(むしろ)を敷いて座る、物乞いさんの格好に身をやつした人がその隊士。

確認を終え、夜の賑わいを見せる通りをそのまま北上。

「あ…」

視線の先に巡察中の新選組の一団が。

永倉さんが率いてるから…二番隊。

途端に、無償に屯所が恋しくなる。

早く戻れるよう、役目を全うしなきゃ、と決意を新たにする。



夕餉は、小料理屋で簡単に済ませ、池田屋の室に戻った。
お湯を伊木さん、わたし、の順で済ませて、二組敷かれた布団にホッとしながらも、更に布団と布団の隙間を空けて。

「嫌われたもんやなぁ…」

という伊木さんの言葉に笑顔で「身の危険を感じてますから」とキッパリ言ってやった。

で…。
行灯一つだけを残して灯を消し、布団に入って…。
でも落ち着かないっていうか…。
伊木さんが本当におとなしく寝てくれるか…寝ても、夜中に目覚めて変な事をしてこないか、とか…色々考えていると…伊木さんに背を向けて布団にもぐりこんでいても、緊張して眠気が来ない。
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