輪廻ノ空-新選組異聞-
わたしは…、とゆっくり口を開きながら、幕末に来た最初に、近藤先生達と考えて決めたわたしの略歴設定を思い出しながら答えた。

「武州の道場で稽古をしていて、出稽古に回っていらっしゃる沖田さん達に稽古をつけて頂いていただけなのです」

お歴々の皆さんは、江戸の試衛館道場で寝食を共にされていましたからね、と付け足す。

「山南さん、永倉さん、原田さん、藤堂さん、齋藤さんも、流派は違いますが、皆さん江戸で近藤先生のお人柄に惚れて食客になっておられたんですよ」

「なるほどなぁ。確かに近藤局長はええお人や。その代わり、副長がごっつ怖いけどな」

と笑って。

「せやけど…蘭は皆に構われまくっとるやろ。望むと望まざると…色々幹部だけの秘密の事とか聞かされてるのとちゃうんか」

蘭は距離置こうとして見えるが、そないな話に接したら面倒で敵わんやろ、と続けた。

「……」

伊木さんはわたしをどこまで馬鹿だと思ってんだろうか。こんなあからさまに聞いてきて。

それか…自分は全く疑われていないと自信があるんだろうか。

でも、馬鹿だと思われて油断してるなら有利。わたしこそ疑われない程度に馬鹿と思われている自分を利用しよう。

「これは秘密の話だけど、なんて軽々しく物を言う人達じゃありませんよ」

だから何が秘密の話で、何がそうではないかなんて知りませんけど、色々隊については話をしますね、と答えた。

「新選組は、武士ではなかった近藤局長や土方さん達の夢を実現させる大切な場所ですから」
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