輪廻ノ空-新選組異聞-
「重い…」

また誰か足とか腕とか乗せて…!
はね除けようと腕やら足やら動かして。

そんなのじゃ退けられない程しっかり被さる重みに一気に目が覚めた。

ここは屯所じゃない!

目を開く。

目の前に間の抜けた伊木さんの寝顔!

「ぎっ」

ぎゃあ~っと叫びそうになるのを慌てて耐えた。廊下に気配が。

「朝餉をお持ちしましたえ」

スラッと襖が開いた。

「きゃっ!やめて八郎様っ!もうこんな刻限!」

嫌ですよ!旦那様!と、揉み合うふりをしながら、怪しまれないように寝間着の襟を抜いて、胸に巻いた晒が見えない程度に襟をくつろげ、寝乱れた風情を作った。

そして…

「いい加減にして!」

と、いまだに寝惚け眼な伊木さんのほっぺたを思い切り平手打ち。

「も、申し訳ありません、お恥ずかしいところを」

わたしはあわてて寝間着を直しながら布団を出て、手を付き頭を下げた。

「いいぇ。お盛んでよろしおす」

平然とした態度でにこりともせずの返答をしながら淡々とお膳を中に入れた。

「すんまへん、見苦しいところを」

伊木さんはようやく起き上がって、肌蹴た寝間着の胸をボリボリ掻いて。

「いいえ、新婚はんどす。しようおへん」

今度は笑顔で伊木さんに答えている様子が…腹が立つと言うより呆れた。露骨過ぎ!



配膳が終わって二人になって。
わたしは着替えを済ませてカンカンになってた。

「どう寝相を間違えたら、わたしの上になるんですか!」

小声で怒鳴る。

「次このようなことになったら、伊木さんだけ布団に縛り付けて寝ますからね!」

本気ですよ!と付け加えて、承諾させた。
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