輪廻ノ空-新選組異聞-
「あ…」

開くと、一文字一文字丁寧に書かれた文面があった。

よく考えたら、普段沖田さん達が書いてるような、一行まるまる繋がっていて、うねうねミミズみたいな文字だと読めなかった。

書道がダメなわたしの為に、手間をかけてくれたんだ。

「未だ僅か三日に候得共如何過ごし居り候…」

は…。
な、何これ!!

一文字一文字は読めても分からない…。

「僅か三日…」

うん、たった三日。「過ごし居り」…。たった三日だけど、どう過ごしてますかって書いてるのかな。

「屯所ハ無変安心召され度候」

屯所は変わり無い…安心してくれ、かな。

「蘭殿不在之一日ハ殊更ニ永く候間 迅速且つ無事任務完了ヲ願い居り候」

わたしがいないから、一日が永い…。早く任務が無事に終わるように願ってます…

文字を追って、意味を捕まえて…沖田さんを想うと切なくて胸が詰まった。

恋しい、ってこんな気持ちを言うんだ、きっと。

この文を綴ってくれた沖田さんも同じように…わたしを恋しいと想ってくれたんだ。

涙が浮かんでくる。

一文字一文字、普段とは違った慣れない作業。

どんなに気を込めて書いてくれたか。

文机に向かって、ピンと姿勢を正して筆を運ぶ沖田さんが瞼に浮かぶ。

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