輪廻ノ空-新選組異聞-
でも伊木さんは、それ以上その話題を広げることは無かった。
今後の布石…かな。
「で、昼間はどないやった?」
伊木さんは肩から手を離すと、私の手から布団を取って敷き始めた。
「紗英さんに嫌われてるようです。紗英さんは八郎様に恋してるんじゃないかしら」
わざと女っぽい口調で言って、伊木さんの顔色を窺う。
「お蘭と夫婦やと知ってるのに、強気なんやな。妾にでもしてやるか!」
言って笑った。
「そうしてあげたらどうですか?わたしはこれ以上恨みを買いたくありません」
多分、紗英さんが自分を好いてるのは承知なんだろう。余裕発言と笑いにムカついた!
女の子を何だと思ってんだ!
「妬いたか?」
ハハハ、と笑って。
無視無視!
ところが急に一転。
「まぁ…実際のところ、こないに危なそうな旅籠に置いておくのは可哀想やと思う」
何に巻き込まれるともわからん。と低い声が真剣で。
「どうにかしてやれれば…ええんやけどな」
「肩入れしてらっしゃるのですね」
色々、手引きや融通、同志として世話になってるから…と言う意味合いも込めてみたけど、でも真剣なのには変わり無くて。
「好いてくれてるんや。憎からず思うもんやろ、普通」
と、こちらはわたしに刺のある言葉をさらりと。
「わたしだって、八郎さんは憎からず思ってますよ。屯…家では一番気を張らずに接することができましたから」
思わず過去形にしちゃったけど、伊木さんは気づかなかったみたい。
「嬉しいことを言うてくれよるな」
「こういうお勤めも…八郎さんとだから、まだ耐えられるんですよ」
付け足しておいた。
「明日は雪でも降るんとちゃうか」
皮肉を返しながらも笑顔だ。
伊木さんは…さっきの紗英さんの事を考えても、やっぱり根はちゃんと真面目な人なんだ。お調子者なだけで。
良い所を見つけると…やっぱり心苦しくなる。この人を裏切り者として処断の場に出さなくてはいけないのだから。
でも。
大切な人達に敵対し、仇為す側の人。
わたしは…決して見逃したりはしない。
今後の布石…かな。
「で、昼間はどないやった?」
伊木さんは肩から手を離すと、私の手から布団を取って敷き始めた。
「紗英さんに嫌われてるようです。紗英さんは八郎様に恋してるんじゃないかしら」
わざと女っぽい口調で言って、伊木さんの顔色を窺う。
「お蘭と夫婦やと知ってるのに、強気なんやな。妾にでもしてやるか!」
言って笑った。
「そうしてあげたらどうですか?わたしはこれ以上恨みを買いたくありません」
多分、紗英さんが自分を好いてるのは承知なんだろう。余裕発言と笑いにムカついた!
女の子を何だと思ってんだ!
「妬いたか?」
ハハハ、と笑って。
無視無視!
ところが急に一転。
「まぁ…実際のところ、こないに危なそうな旅籠に置いておくのは可哀想やと思う」
何に巻き込まれるともわからん。と低い声が真剣で。
「どうにかしてやれれば…ええんやけどな」
「肩入れしてらっしゃるのですね」
色々、手引きや融通、同志として世話になってるから…と言う意味合いも込めてみたけど、でも真剣なのには変わり無くて。
「好いてくれてるんや。憎からず思うもんやろ、普通」
と、こちらはわたしに刺のある言葉をさらりと。
「わたしだって、八郎さんは憎からず思ってますよ。屯…家では一番気を張らずに接することができましたから」
思わず過去形にしちゃったけど、伊木さんは気づかなかったみたい。
「嬉しいことを言うてくれよるな」
「こういうお勤めも…八郎さんとだから、まだ耐えられるんですよ」
付け足しておいた。
「明日は雪でも降るんとちゃうか」
皮肉を返しながらも笑顔だ。
伊木さんは…さっきの紗英さんの事を考えても、やっぱり根はちゃんと真面目な人なんだ。お調子者なだけで。
良い所を見つけると…やっぱり心苦しくなる。この人を裏切り者として処断の場に出さなくてはいけないのだから。
でも。
大切な人達に敵対し、仇為す側の人。
わたしは…決して見逃したりはしない。