輪廻ノ空-新選組異聞-
パッと見は木村の拓哉くんみたい…!!
ここに来て、初めて土方さん以上の男前を見た!!
「俺の顔に何かついてるかい?」
笑顔が眩しい。
「美男、美女の…図やな」
けど…伊木さんのかすれた声が我に返らせてくれた。
「八郎さん!」
私は隣を見やって、立ち上がろうと手を地面について足に力を入れた。
その手をお武家さんが取って握り、立ち上がらせてくれた。
「あんた……」
小さな驚きのような呟きの後、ニコッと笑みが向けられ、ギュッと改めて手を握られた。
「あ…」
お互いに、激しい稽古を積んだ、剣客の掌だった。
何か勘づかれた?
得体も知れない人に!
緊張が走ったけど…悪い人じゃなさそう…。
「あの…」
声を掛ける前に、お武家さんは伊木さんの体を運ばれてきた戸板に移す作業に入っていて。
止血の手拭いを頭に巻きながら朗らかだ。
「ったくあんたは、自分の女房捕まえて、他人の俺と一緒に美男美女たぁ…呆れた物言いだねぇ」
「実際そう見えたさかいに…っいたた…」
「頭の怪我は血は沢山出るが、大したことねぇよ。安心しな」
そこに様子を見に戻って来たらしい紗英さんが、絶叫しながら駆け寄って来た。
驚いて目を見開いたお武家さんだったけど、お医者さんも到着して。池田屋の居室まで運ぶのも手伝ってくれた。
「すんまへん、色々と…見苦しい点も含めて世話かけました」
伊木さんは布団に身を起こして、深々頭を下げた。
「いやいや」
お武家さんは笑って。
「まぁ苦労だな」
と伊木さんの肩を叩いた。
「あの、お武家はんのご尊名をお聞かせ願えまへんか。手前どもは大坂の呉服問屋桔梗屋の八郎と蘭と申します」
「丁寧に痛み入る」
お武家さんは小さく会釈して。
「だがねぇ、こんな所で名乗った日にゃあ、命の危ないご時世だろう」
と苦笑い。でもすぐに言葉を継いだ。
「本音は、大したこともしてねぇのに、名乗る程じゃあないってところだ」
気遣いは無用だぜ、と爽やかに言う。
でも…このまま帰しては…とわたしは焦った。多分わたしの手を握ったこの人は、私たちがただの町人とは思ってないはず。
ここに来て、初めて土方さん以上の男前を見た!!
「俺の顔に何かついてるかい?」
笑顔が眩しい。
「美男、美女の…図やな」
けど…伊木さんのかすれた声が我に返らせてくれた。
「八郎さん!」
私は隣を見やって、立ち上がろうと手を地面について足に力を入れた。
その手をお武家さんが取って握り、立ち上がらせてくれた。
「あんた……」
小さな驚きのような呟きの後、ニコッと笑みが向けられ、ギュッと改めて手を握られた。
「あ…」
お互いに、激しい稽古を積んだ、剣客の掌だった。
何か勘づかれた?
得体も知れない人に!
緊張が走ったけど…悪い人じゃなさそう…。
「あの…」
声を掛ける前に、お武家さんは伊木さんの体を運ばれてきた戸板に移す作業に入っていて。
止血の手拭いを頭に巻きながら朗らかだ。
「ったくあんたは、自分の女房捕まえて、他人の俺と一緒に美男美女たぁ…呆れた物言いだねぇ」
「実際そう見えたさかいに…っいたた…」
「頭の怪我は血は沢山出るが、大したことねぇよ。安心しな」
そこに様子を見に戻って来たらしい紗英さんが、絶叫しながら駆け寄って来た。
驚いて目を見開いたお武家さんだったけど、お医者さんも到着して。池田屋の居室まで運ぶのも手伝ってくれた。
「すんまへん、色々と…見苦しい点も含めて世話かけました」
伊木さんは布団に身を起こして、深々頭を下げた。
「いやいや」
お武家さんは笑って。
「まぁ苦労だな」
と伊木さんの肩を叩いた。
「あの、お武家はんのご尊名をお聞かせ願えまへんか。手前どもは大坂の呉服問屋桔梗屋の八郎と蘭と申します」
「丁寧に痛み入る」
お武家さんは小さく会釈して。
「だがねぇ、こんな所で名乗った日にゃあ、命の危ないご時世だろう」
と苦笑い。でもすぐに言葉を継いだ。
「本音は、大したこともしてねぇのに、名乗る程じゃあないってところだ」
気遣いは無用だぜ、と爽やかに言う。
でも…このまま帰しては…とわたしは焦った。多分わたしの手を握ったこの人は、私たちがただの町人とは思ってないはず。