輪廻ノ空-新選組異聞-
知り合い!?

世間は狭いって言うけど…。

「では」

と、私は口を開いた。

「皆様に宜しくお伝えください。とても助かっていると」

山崎さんの事を思い出して。実際に動いてくれる山崎さんと、采配している土方さん達幹部の方達に、気持ちも助けて貰っている。

「それと…」

わたしは言い澱んだけれど、やっぱり口にした。

「沖田さんに、ありがとうと」

わたしを伊木さんと夫婦だと思ってる伊庭さんが、何を思うか…ひやひやしながら顔を窺う。

「確かに承ったぜ」

伊庭さんは立ち入らない、という姿勢を崩さず、笑みを返してくれた。

「ありがとうございます。宜しくお願い致します」

わたしは深々と頭を下げて。
立ち去る伊庭さんの背を見送った。


そして。
池田屋の室に戻る。
聞きたい事、言いたい事が沢山あるよ!!

「八郎様!」

わたしは室に入るなり、伊木さんが横になっている布団の側にドッカと正座した。

「無茶をなさらないで下さい!お風邪で寝込んでらしたでしょう!」

助けて頂いて、本当に有り難かったです!でも…と、伊木さんの顔を改めて見る。

膏薬を塗って巻かれた包帯が痛々しい。

角材が倒れてきた時の恐怖も蘇る。伊木さんが血を流してた場面も。

助かって、大事に至らなくて、一通り落ち着いたら、ホッとして力が抜けた。

「死んでしまうかと思いました…」

何故、どうしてあそこにいたのか、と重ねて聞いた。

「厠に立って、戻ってきたんやが、そろそろ蘭が戻る頃合いやと思うて、窓の外を見た」

そうしたら、紗英さんが私を手招きしているのが見えたと言う。

「不穏に思って表に出たら、あないな場面やった」
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