輪廻ノ空-新選組異聞-
「うちが好いといやすのを知りながら、協力させはるんは…うちの事嫌いやからどす」

続いている紗英さんの言葉は、半分素通りだった。

全部策略だったんだ。

わたしは危うく伊木さんの策に乗せられて、伊木さんに申し訳無さと、寄せてくれている好意に同情し始めてた。

とにかく早く、過激派浪士達の情報を掴んで、伊木さんを捕らえなくては。



昨年の八月十八日の政変以降、新選組の探索や巡察が実を結ばず、全然活躍出来ていないのが、近藤局長や土方さん、会津に恩義を感じて、なんとかお役に立ちたいと考える皆の焦りを呼んでた。

その原因の殆どが、伊木さんが浪士達に新選組の情報を流しているからだと判明しての、今回のお役目。

情に流されてはいけない。

わたしは気持ちをしっかりと入れ替えた。

深呼吸をして、改めて聞き耳を立てる。


「武器弾薬は着々と集まってる。壬生狼はおろか、京も天子様も我らの手中になって、幕府方は歴史から消えるんじゃ」

「せやから、些細な妬心は捨てろと言わはるんどすな」

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