輪廻ノ空-新選組異聞-
ヒジカタさんの指示の間、コンドーさんはニコニコと私を見ていて。

「あの…?」

「いや、すまん。嬉しいのだ。あんたが本当に二百年ほど先から来たならば、そこでも我が流派は門弟を持って続いているという事だ。しかも、あんたは本当に筋が良い。見事な動き、そして太刀筋だった。中極位目録も真だろう」

「…………」

なんだろう、本当に純粋に嬉しかった。
お父さんの部屋の腕組みをしたコンドーさんの白黒の写真。お父さんはとても尊敬してた。その人に直接褒められて。私は……自分の時代に帰られるまでバクマツで…なんとかやってけるかも知れない。そう思った。

「ありがとうございます、近藤先生」

私は気持ちを改めて、心から頭を下げた。
こんなにすがすがしい気持ちになれるなんて…
さっきまで本当にパニクってたのが嘘みたいだよ。

「蘭丸。まずは室へ案内します。細心の注意は忘れないように…って道々必要な事は教えますが、ここは男だけの所帯ですからね」

「はい、沖田さん、宜しくお願い致します」

私は沖田さんにも深々一礼した。

「ふふっ、良い加減お互い面ぐらい取りましょうか」

沖田さんに言われて、お互い防具をつけたままだということを思い出した。



防具を片づけて道場を出た。
太陽はかなり西に傾いて。
秋らしいうろこ雲が空を埋めていて。

「急ぎましょう。店が閉まっちまう」

「はい」

私達は歩調を早めて出発した。
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