輪廻ノ空-新選組異聞-
「苦しまなかったでしょうか、八郎さん…」

「絶対大丈夫ですよ。皮一枚残して奇麗に一断ち。苦しむ筈がありません」

死に顔は、とても穏やかだった。目を閉じて…。

「はい、そうですね」

ガタガタと震えていたのは治まったけれど…小刻みに手は震えていて。

冷えきった手が、いまだに緊張を伝えてた。

沖田さんは体を少し離すと、その手を暖めるように握ってくれて。

「実はですね、伊木さんから文を預かっています」

「え?」

「今、読めますか?」

「あ…」

今読んだら…

号泣するかも…。

生々しすぎて。

「も、もう少し待って下さい」

「わかりました」

懐に手をやりかけていた沖田さんは、その手をおろして。

「私と一緒に読むようにと言っていましたよ」

「そうなんですか」

「次の非番は明後日でしたね。その時にでも落ち着ける場所で一緒に読みましょうか」

沖田さんの提案に、私は頷いた。



翌々日、わたしと沖田さんは嵐山のあの茶屋にいた。

たとえわたしが取り乱したとしても、他の隊士に行きあわせてしまったりしない程度離れていて、誰にも邪魔されずに気兼ねなく二人きりになれる場所で、すぐに思いついたのが、ここだった。

女将さんは勝手知ったる、という扱いで、わたしたちを先日と同じ室に通してくれた。
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