輪廻ノ空-新選組異聞-
「まずは…」

沖田さんは文を畳んで戻すと、わたしと向き合って膝のあう位置に座り直して口を開いた。

「あなたのお説教を聞きましょう」

と、お説教されるにしては、上からの物言いな感じで。

でも負けずに沖田さんを見つめて言葉を紡ぐ。

「沖田さんと伊木さんとわたしの間で勝ち負けは無意味です」

言い切って、息を吸い直して言葉を継ぐ。

「わたしが好きなのは沖田さんだからです」

キッパリ、強い語調で言った。

「勝ち負けで言うなら、伊木さんに勝ち目はありません」

沖田さんは一瞬表情から力を抜いた。

「なのに…悲しいことを言わないでくれませんか!!」

私は沖田さんの言葉を思い出して、思わず頬を膨らませた。

「だいたい、良いか悪いかなんておかしいでしょう!ダメだったら、資格がなかったら、気持ちを消せるんですか!止められるんですか!」

わたしはそんなの無理です!と沖田さんを見据えて。

「たとえどんなにダメな状況でも、ダメだと言われても、気持ちは止められないし、愛してる気持ちは誠だし、わたしは…沖田さんがわたしを嫌いになっても…疎ましく思われるような事になっても…」

半分叫ぶみたいに言いながら、頭によぎったのは、病で亡くなる運命の沖田さんの未来の予想。

それとなく医家の出の山崎さんに教えて貰ったんだ、労咳は人に伝染る死の病なのだと。

沖田さんがわたしを遠ざけようとする日が、遠くない未来にあるかも知れない。

でも…

「でもわたしは、沖田さんをずっと愛し抜きます!!」

「ら…」

「覚えておいて下さい!!絶対に忘れないで下さい!!」



突然に視界が塞がれて苦しい圧迫。

今までになく、強く、深く、抱き締められてた。
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