輪廻ノ空-新選組異聞-
最初に向かったのは刀剣屋。
男の…武士のなりをして無腰はまずい。
それは私にだって分かる。
隊が懇意にしているという刀剣屋は幸いにも屯所から近くて、四条通に面したこぢんまりとした店構えの刀剣屋だった。
「とりあえず手に馴染むものを選びなさい。重さ、長さは無理のないものを。あなたの身の丈から言えば、長さは恐らくどれも大丈夫でしょうけど」
わたしは無言で頷いた。
古武道をしているとは言え、真剣を自分で選ぶなんて事はなかったよ。お父さんの与えてくれるままを使ってたし…。
値段はどうなってんの?
と内心ドキドキしながら、店主がいくつか出してきたものの、一番手前のものを手に取る。
「蘭丸。何色が好きですか?」
「は?」
こっちは真剣を手にしてドキドキしてんのに、何、その脈略のない質問…!
「ピンク」
腹立ち紛れに答えてみる。
「ぴ、ぴんく…?」
うろたえる様子がおかしくって、ちょっとせいせいした。
「桃色っていうの…?
桜色って言うのかな?」
ああ…、と沖田さんは納得したみたいだったけど、すぐに首を左右に振って。
「すみません。言葉が足りませんでしたね」
沖田さんは咳払いをして。私が刀を選んでいる間に、古着屋で着物を求めてくるから、という積もりで聞いたのだと付け加えた。
「そのような色の着物を着ていたら、目立つ上、乱心しているのかと思われます」
そうですね、と私も漸く真顔に戻って。
目立つなんて飛んでもないもの。
「落ち着いた色目を言って貰えると助かります」
「じゃあ…紺色とか深緑とかをお願いします。紺色とか深緑はさすがに分かりますよね?」
はい、と沖田さんは頷いて。
「あ、沖田さんが着てるようなのでいいですよ。紺色…に、白の細かい模様ですね」
「分かりました。紺地に白の絣で構いませんね。では袴も無難に選んで来ます。その間に選んでいて下さい」
沖田さんは言い置いて、風のように出ていった。
男の…武士のなりをして無腰はまずい。
それは私にだって分かる。
隊が懇意にしているという刀剣屋は幸いにも屯所から近くて、四条通に面したこぢんまりとした店構えの刀剣屋だった。
「とりあえず手に馴染むものを選びなさい。重さ、長さは無理のないものを。あなたの身の丈から言えば、長さは恐らくどれも大丈夫でしょうけど」
わたしは無言で頷いた。
古武道をしているとは言え、真剣を自分で選ぶなんて事はなかったよ。お父さんの与えてくれるままを使ってたし…。
値段はどうなってんの?
と内心ドキドキしながら、店主がいくつか出してきたものの、一番手前のものを手に取る。
「蘭丸。何色が好きですか?」
「は?」
こっちは真剣を手にしてドキドキしてんのに、何、その脈略のない質問…!
「ピンク」
腹立ち紛れに答えてみる。
「ぴ、ぴんく…?」
うろたえる様子がおかしくって、ちょっとせいせいした。
「桃色っていうの…?
桜色って言うのかな?」
ああ…、と沖田さんは納得したみたいだったけど、すぐに首を左右に振って。
「すみません。言葉が足りませんでしたね」
沖田さんは咳払いをして。私が刀を選んでいる間に、古着屋で着物を求めてくるから、という積もりで聞いたのだと付け加えた。
「そのような色の着物を着ていたら、目立つ上、乱心しているのかと思われます」
そうですね、と私も漸く真顔に戻って。
目立つなんて飛んでもないもの。
「落ち着いた色目を言って貰えると助かります」
「じゃあ…紺色とか深緑とかをお願いします。紺色とか深緑はさすがに分かりますよね?」
はい、と沖田さんは頷いて。
「あ、沖田さんが着てるようなのでいいですよ。紺色…に、白の細かい模様ですね」
「分かりました。紺地に白の絣で構いませんね。では袴も無難に選んで来ます。その間に選んでいて下さい」
沖田さんは言い置いて、風のように出ていった。