輪廻ノ空-新選組異聞-
黙ったまま思いを巡らせていたわたしに、沖田さんの言葉が再び届いた。

「捕まってからの伊木さんとあなたには…あなた達にだけ通い合っているところがありました。私は…当然ですが、入り込める余地は無かった。それに、そんな伊木さんの前で、私は自分の無力を感じていました」

嫉妬したと言うならば、余りに場違いな真剣な状況で、私は己が浅ましい感情が情けなくで堪らなかった、と沖田さんは苦しそうに言葉を継いだ。

「あなたを好きでいて良いのか、この伊木さんを前にして、あなたを愛していると言えるのだろうか。そう考えてしまいました」

苦笑いになっても良いから笑顔になって言い終えたかったみたいな沖田さん。無理に笑みを浮かべた顔が切なくて。

でも、瞳の中にはまだまだそんな迷いを抱えたような色が渦巻いているのが見えた。

わたしは…

そんな沖田さんが愛しくて。

愛しくて堪らなくて。

だんだん涙が込み上げてきた。

「伊木さんの前で、自分の小ささを感じながらも…」

沖田さんはゆっくり口を開いた。

「教えられたんです。自分が如何にあなたを愛しく想っているか。惚れているのかを」

だからこそ、強い嫉妬を感じた。と、まっすぐ見つめられた。

「…っ」

伊木さんの顔が見えた気がした。
沖田さんに重なって。

そして沖田さんが再び強い眼差しでわたしを見つめているのを見つめ返すわたしの目から、ついに涙がこぼれた。
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