輪廻ノ空-新選組異聞-
「あなたのお説教もわかります。身にしみました。それに、嬉しかった」

沖田さんは言葉を続ける。

でも、と。

「私の気持ちも分かってほしい。どんなに苦しかったか。女々しいといえばそれまで。けれど、それが真実」

惚れちまった気持ちがこんなに自分を翻弄するなんてね、と自嘲するような笑みさえ浮かべて。

わたしは何度も首を振って。

「女々しいなんて…っ、思いません」

愛情が深くて、それがたった一つの結論で真実だとしても、絆が強まるにつれて、きれいごとだけでは済まなくなる、というのがとてもよく分かった。

「沖田さん、好きです。あなただから」

愛しています、と、多分、涙でぐちゃぐちゃになっているだろう顔で告げた。

「私も、あなたに惚れちまって、どうしようもない」

沖田さんはわたしを見つめながら頬に手を添えて、親指で涙をぐっと拭ってくれて。そして、その親指を下に移動させると、そっと唇をなぞった。

「ん……」

唐突で少しくすぐったくて、薄く開いていた唇をぐっと結ぶと、自分の涙の味がした。

「蘭丸…」

沖田さんの視線が唇に移動したのが分かって。

わたしは瞳を閉じた。

「本当に小さい事だけれど…。伊木さんに奪われていなくて良かった…」

小さく呟くような言葉が、呼気と一緒に唇に近づいて。

重なった。

すぐに離れた唇。

わたしは思わず追いかけるように自分から唇を沖田さんのそれに押し付けてた。

食べられてしまいそうな激しさで返された口付け。

「ん……っ、っ」

「蘭丸」

唇も吐息も触れられる位置で沖田さんが言葉を発した。

「止まらなくなって、しまいますよ…?」

「…はい」

間近な瞳と自分の瞳を合わせて答える。
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