輪廻ノ空-新選組異聞-
「まぁ、いい。いつかは廃れるだろ」

土方さんは気を取り直したように言って、改めてわたしに向き合った。

「とにかく、ここ数日が正念場だろう。お前の今日の探索でも…坂本がかかったんだろう?取り逃がしちまったのは、いてぇが…」

気を張って探索に当たってくれ。
そして何かあれば連絡は密にしてくれ。

土方さんはそういう指示を出してわたしを解放してくれた。



副長室を出ると、山崎さんは改めてわたしに向き合って。

「探索方は、きっちりと刻限を区切って行動できる部署やあらへんのは、俺も充分承知してるんや。けど…今回は少々焦ったわ。単独で探索に当たっとる時の、無謀な行いはやめてもらえるとありがたい」

優しいけれど、釘をさすように言われて。

普段冷静沈着な山崎さんにまで心配かけちゃったんだ、と思わずうなだれた。

「すみませんでした…。でも…人の命を見捨てる事ができなくて…」

「それはもちろんや。人命救助は大切や」

けど、山崎さんは続けた。

「自分も流されそうになって、坂本に助けられたやろ?坂本がおらへんかったらどうなってたか…」

「う…。すみません…」

「このような所で立ち話か?」

スッと人影がさして。

見たら齋藤さんが立ってた。

「あ、すんまへん。邪魔でおますな」

「いや…ただ…」

あまり人目につく所でふたりで話こんでいたりしては…人目がどこにあるか分からんぞ、と齋藤さんは意味深に微かな苦笑を浮かべた。

「長屋門前で、総司が須藤をぶった後…抱擁しただろう。それを見ていた隊士達が騒いでいたが…」

「……男色をこれ以上流行らせては、あきまへんな」

「須藤は特に耳目を集める容姿と様子だから、な」

「すみません…」

もう何度目かも忘れる詫びを言って、わたしは深々頭を下げると、その場を後にした。
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