輪廻ノ空-新選組異聞-
一番隊を離れて観察方に回されてからは、山崎さんや島田魁さん観察方のみんなとの室に移動になった。

一番隊の大人数の室より少なくて落ち着くし、観察方という隠密の行動が多い部署の為、みんなわたしがおなごだと知っている。

だから、気が楽だった。

そんな室に戻って、着慣れない高級な正絹の着物から、普段着に着替えようと、濡れ縁を歩いていたら、室の前の縁に腰を下ろした沖田さんの姿が目に入った。

「沖田さん…」

わたしは、そっと歩み寄って、ぼんやり中庭を眺める沖田さんに声をかけた。

「今日はすみませんでした」

言いながら見ると、袴が変わっていて、着替えてくれたんだと、ホッとしながら、沖田さんの隣に腰を下ろした。

「土方さんも心配していたでしょう」

「あ、いえ。寧ろ心配し過ぎな沖田さんを心配してましたよ!」

何だか落ち込み気味な沖田さんに笑って貰いたくて、そんな風に言ったけど、にこっと苦笑い風な笑みが戻ってきただけで。

わたしは明らかにいつもと様子の違う沖田さんの横顔をジッと見つめた。

ほっぺたが赤い…かな。

熱!?

わたしの為に川に入ったし!

「失礼しますね」

わたしは言ってから、沖田さんの広々と綺麗なおでこに手を当てた。

「熱など無いですよ」

わたしの意図に気付いた沖田さんは、今度はくっきりと苦笑を浮かべて。

「でも…元気ないですよ?…って、わたしのせいですね」

本当にすみません!二度と無茶はしませんから、と頭を下げる。

「今回で懲りました。自分が行かなくても、大声で助けを呼びに行くとか…」

他に方法はあったのに。と、流されかけた時の恐怖を思い出して身震いした。
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