輪廻ノ空-新選組異聞-
ポカーンと馬鹿な顔をしてたと思う。

けど、まったく予想もしてなかった事が起きると、人間って本当に真っ白になる。

「おい」

額を指で小突かれた。

「はっ」

我に返る。

「よく分からない言葉が聞こえた」

そう答えたら、何度でも言うてやる、と坂本さんは続けた。

「別ん時代から来たがじゃろ」



ちょっ…
マジですか…!?




でも、認める訳にはいかない。

敵方の人。

利用しようという考えが湧かないとも言えない。

でも、本当に見えてるなら、違うと言い切るのも難しい。

「ご想像にお任せします…」

わたしは苦し紛れに言って、もう逃げようと回れ右をした。

「おっ、待っとーせ!!」

肩を掴まれた。

「宮部さんとこの小遣いさん捕まって以来、壬生狼も過激派も不穏に動いちょる」

真剣な顔。

思わず足を止めて、しっかり向き合った。

「わしは暴力反対じゃ。ええ人材を無くす上に、恨みしか生まんぜよ」

じゃけんど、わしを慕うてくれよる若手も血気にはやっちょる状態じゃ。と、坂本さんは情けなさそうな顔で肩を落とした。

「こうなったら未然に取り締うて貰うのが一番ながじゃ」

自分は京を離れないといけないから何とか最善の策を頼む、と坂本さんはわたしに頭を下げたのだった。

そして、自分からサッサと立ち去って行った。
< 176 / 297 >

この作品をシェア

pagetop