輪廻ノ空-新選組異聞-
「あ…」

見送っていいの!?

捕まえなきゃ!!

四条通の方に行った。

ふた呼吸分程遅れたけど、わたしは慌てて駆け出した。



「いない…」

人ごみに紛れたのか、足が速いのか、綺麗サッパリ姿はなくなっていた。

でもまだどこかに…!

消える訳ないし!

走りながら視線を巡らせる。


タタタッ


タタタッ


足音が。
追い掛けてくる。

速度を落とした。

「どうしたんですか?」

尋常ではない速さでしたが、と早足の速度になったわたしに並びかけながら声をかけてきたのは、沖田さんだった。

「お、沖田さん」

わたしはホッとして足を止めた。

途端に、汗がどっと吹き出してきて。呼吸を整えながら、懐中に入れていた手ぬぐいを出して汗を拭う。

「坂本龍馬がいたので、追い掛けてたんです」

逃げられてしまったようですが…と付け足して。

「またそんな無茶をひとりで。壬生の入り口辺りから四条通をずっと走っていたでしょう。呼べば、すぐに隊で人数割いて、すぐに駆けつけましたよ」

じろり、と沖田さんに睨まれたので、すみませんと目を見て詫びた。呼び子笛を鳴らせば良かったのに、思いもつかなかった…。

しょんぼりする思いで、わたしは止まらない汗を拭っていた。

あれ…?

沖田さんも壬生の入り口からわたしを見つけて追い掛けてきたなら、同じぐらいの距離を走っているはずなのに…

涼しい顔をしている。

「沖田さんは、暑さに強い上、体力あるんですね~」

「そうでしょうか?自分ではそうは思いませんが」

微苦笑で額を掻く。

感心した。
そりゃ、稽古でもなかなか勝てない訳だよ。
< 177 / 297 >

この作品をシェア

pagetop