輪廻ノ空-新選組異聞-
「取り敢えず、坂本の事は忘れて、任務に戻って下さいね」
沖田さんはそう言ってわたしの頭を励ますようにポンと軽く叩いた。
「はい!!」
あっ!!と、思い出したことがあって、思わず声を上げたわたしに、沖田さんは目を丸くした。
「どうしたんですか」
「坂本さんに、過激派浪士の方に不穏な動きがあるから取り締まってくれたら助かる…って…言われた…んですけど…」
言いながら、坂本さんが妙なことを言っているんだと気付いて、しどろもどろになった。
「坂本がそんなことを!?」
沖田さんも訝しむような顔で。
「確かにそう言いました。えーと…」
無駄に命を落としたり、恨みを生んだりするのは望まないけど、自分は京を離れるから…
「事件が起きる前に取り締まって欲しいと…言ったんですか」
「はい」
変わった人だ、と沖田さんは呆れたような、でもおかしそうに笑みを浮かべて。
「でも何かを具体的には言わなかったようですね」
「はい」
なるほど、と沖田さんは言って。
「もう充分探索には重きを置いて動いていますし、具体的な情報が無いですから、土方さん達に報告しなくていいですよ」
寧ろ、そんな会話をしてる暇があるなら、何故捕まえなかったって、叱られちまうかも、と沖田さんは悪戯っぽく笑って。
「わかりました」
「ですが、何かを起こそうという事は十割確実になりました。これまで以上に心して、探索に当たって下さいね」
「はい、わかりました」
わたしはしっかりと頷いた。
「では、私は巡察がありますから」
行かなくてはなりません、と溜め息まじりに言った沖田さん。
「少しだけいいですか」
「は…」
はい、と答える前に、急にソッと、でもしっかり手を引かれて、通りの陰に連れられて。
「抱擁します」
いいですか、と問われて頷くと同時に、ぎゅうっと抱きしめられて、わたしも沖田さんの背に腕を回した。
「刀が邪魔だ…」
ボソッと吐き出された言葉が、もっと深く抱きしめたいのに、互いに腰にさした刀で阻まれているもどかしさが、思い切りこもっていて、くすぐったいような嬉しさがこみ上げた。
沖田さんはそう言ってわたしの頭を励ますようにポンと軽く叩いた。
「はい!!」
あっ!!と、思い出したことがあって、思わず声を上げたわたしに、沖田さんは目を丸くした。
「どうしたんですか」
「坂本さんに、過激派浪士の方に不穏な動きがあるから取り締まってくれたら助かる…って…言われた…んですけど…」
言いながら、坂本さんが妙なことを言っているんだと気付いて、しどろもどろになった。
「坂本がそんなことを!?」
沖田さんも訝しむような顔で。
「確かにそう言いました。えーと…」
無駄に命を落としたり、恨みを生んだりするのは望まないけど、自分は京を離れるから…
「事件が起きる前に取り締まって欲しいと…言ったんですか」
「はい」
変わった人だ、と沖田さんは呆れたような、でもおかしそうに笑みを浮かべて。
「でも何かを具体的には言わなかったようですね」
「はい」
なるほど、と沖田さんは言って。
「もう充分探索には重きを置いて動いていますし、具体的な情報が無いですから、土方さん達に報告しなくていいですよ」
寧ろ、そんな会話をしてる暇があるなら、何故捕まえなかったって、叱られちまうかも、と沖田さんは悪戯っぽく笑って。
「わかりました」
「ですが、何かを起こそうという事は十割確実になりました。これまで以上に心して、探索に当たって下さいね」
「はい、わかりました」
わたしはしっかりと頷いた。
「では、私は巡察がありますから」
行かなくてはなりません、と溜め息まじりに言った沖田さん。
「少しだけいいですか」
「は…」
はい、と答える前に、急にソッと、でもしっかり手を引かれて、通りの陰に連れられて。
「抱擁します」
いいですか、と問われて頷くと同時に、ぎゅうっと抱きしめられて、わたしも沖田さんの背に腕を回した。
「刀が邪魔だ…」
ボソッと吐き出された言葉が、もっと深く抱きしめたいのに、互いに腰にさした刀で阻まれているもどかしさが、思い切りこもっていて、くすぐったいような嬉しさがこみ上げた。