輪廻ノ空-新選組異聞-
事態は急展開した。


六月五日、早朝。

永倉さん達が、桝屋喜右衛門を捕まえてきた。

坂本さんから過激派浪士も事を起こそうとしていると聞いて、わたしは真っ先に桝屋に動きがあるかも、って思ったんだ。

事を起こすなら、武器が必要。

それを蓄えている桝屋に動きがあるかもって思って。

実際、沖田さんと別れた後、桝屋を重点的に探索していたら、浪士の出入りがあった。

それを報告しての、永倉さん達実戦方の御用改めとなった。

わたしは、赤字で「池田屋事件」とだけ記されていた、父さんのメモを、こっそり見直した。

何度見ても、それしか書いてない。

はぁ。

早朝から今までにない慌ただしさの屯所。

いったいどんな一日になるんだろう。

でも、確実に言えるのは、今日、池田屋で赤字で書かれるような事件になるということ。

実戦方ではないけれど、暑さのせいで体調不良の隊士が多いし、気を引き締めて。

どんな動きにも、すぐに対応出来るように。



「考えられる浪士方の動向だが…」

土方さんが緊急で桝屋に赴いている隊士以外の全員を道場に集めて口火を切った。



一、新選組の屯所を襲って桝屋、もとい、古高俊太郎を奪いにくる。

二、桝屋を襲って武器を確保する。

三、とにかく集まって策を練る。



この三つが主軸として考えられる動向として土方さんの口から出た。

「一番可能性として高いのは一番かもしれねぇ。焦って考えも無しに動けば、だがな」

と、土方さんは腕を組んで。

「今日動ける隊士は少ない。二十人余りだろう」

集まって策を練るならば、それは監察方の探索に頼るしかない、ということで、山崎さん、島田さんとわたしとで、市中の動向を探る事になった。

屯所が襲われる恐れがある為、半数余りの隊士は屯所に。残りは桝屋に向かう事となった。

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