輪廻ノ空-新選組異聞-
京は広い。

だだっ広いよ!!

分かってる。

都だしな!!

今までだって監察方だけでやってきた。

けど、緊急事態だともう、どこをどうしたらいいか分からない。

ただ、言えるのは、浪士達は通報の恐れもある市民の中には紛れないから、倒幕派贔屓の花街とかの繁華街、商家が会合に使われる。

だから花街に絞った。

それでも広いんだ。

三人では。

西陣近くの上七軒と祇園界隈がまず離れ過ぎてる。


「俺がまずは上七軒の様子を見てくるわ。あすこは賑わいが少ない分、異変は感知しやすいさかいな、何もあらへんかったら、捨ててええやろ」

山崎さんの提案に、わたしも島田さんも無言で頷いた。

「正午には全員屯所に戻れ。状況確認と報告をしてもらいたい」

土方さんの指示を聞いて、わたし達監察方は二手にわかれて屯所を出た。



「祇園界隈、鴨川左岸の木屋町やら先斗町など、これまでも浪士共を匿ってきた区域を含めれば、広域になる。向こうも血気にはやっとるだろうから、何があるかわからん今、別行動は得策ではない」

島田さんの言葉はもっともで、わたしもそう思う。

踏み込んだりする訳ではなくて、浪士達に動きはないか、街に異変はないか探るだけ。

それでも緊張が高まる。

わたし達はまず、桝屋にいる仲間の様子を確認してから、付近の探索にあたることにした。



桝屋は、正に大混乱になってた。

遠くからも聞こえる怒号。

物音。


残っていた武器弾薬の調べの隙を狙って、浪士達が奪って行ったのだった。

油断があったとは言い切れない。

割ける隊士が少な過ぎたんだ。
< 182 / 297 >

この作品をシェア

pagetop