輪廻ノ空-新選組異聞-
「大丈夫ですか、蘭丸」

沖田さんに肩を叩かれて、我に返った。

「…あっ、すみません」


考え事を…と答えながら、思わず沖田さんに口を開いてた。

「あの、沖田さん、」

お話が、と言いかけたところに、土方さんが来た。

「いやぁ、たまんねぇ暑さだな。野郎ばかり道場に集まると一気に臭さも増していけねぇ」

と、首筋の汗を手拭いで拭きながら言って。

「で、どうした」

「いえ」

わたしは、しっかりとした考えも無しに話そうとしていたのを遮られた事にホッとしながら、

「暑さでぼんやりしてました」

と、確かに滴っている汗を単衣の袖でぐいぐい拭って答えた。

「ったく、手拭いぐれぇ持ってねぇのか」

と、土方さんは自分の手拭いでわたしのおでこをゴシゴシ拭いてきて。

「やめて下さいっ」

あわあわして抵抗を試みていると、あっさり手が離れて。

「総司、おめぇは涼しそうなだな」

汗一粒浮かばない顔。

だけど涼しそうには見えなくて、ちょっと心配になる。

「寒い…ですか?風邪とかでは…」

「寒くなどないですよ、大丈夫です」

苦笑を向けられ、前髪を混ぜるように、くしゃと撫でられて、わたしは心配を引っ込めた。

「ところでだ、須藤」

「はい」

「おめぇは自分の持ち場を聞いていたか?」

う、と詰まる。

「ボーッとしていて…聞いていませんでした…」

素直に認めて謝る。

「おめぇは…!」

「いっ、いでででで…」

ほっぺたをぐいっと抓られて。

「ぼっとしてたじゃねぇだろ!深刻な面しやがって!」

ひとりで抱え込むんじゃねぇ、とビシリと告げられて思わず目を見開いてた。

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