輪廻ノ空-新選組異聞-


偉い。


偉い?


「総司に聞いていて知っている」

年表を持っているんだろう?


続いた言葉に、土方さんの言おうとしていることがわかった。

「偉くなんかないです」

「んじゃあ、強ぇ」

「強くなんかありません!」


知っている事実を言えば楽だけど、そんな度胸なくて。

言えばどうなるのか分からなくて怖いから言えない。

「意気地無しです!!」

わたしは、キッと土方さんを見つめた。

「土方さんも、知りたくないんですか?わたしに聞きたいと思いませんか!?どうして聞かないんですか」


逆ギレだよ、わたし。

最悪。

でも一度堰を切った気持ちは言葉を止めてくれなくて。

「聞いてくれたら楽なのに!!」

半分叫んでた。


「だから、一人で抱え込むな!俺達を頼れ」


土方さんは私の襟を乱暴に掴んで、グイッと引き寄せるとドスの効いた声で言った。

「おめぇの事情は知ってんだ。解決は出来ねぇでも、相談するだけで軽くなるだろぅが!!」

一人で悩んで、俺達に言いたくねぇなら、ぼんやりして、下知を聞き逃したりするんじゃねぇ!

と、怖いぐらい怒鳴られたのに…

暖かくて。

涙が出そうになった。

「ありがとう、ございます…」

素直に、心から思った言葉を言って、頭を下げた。

「わかりやがったか」

ならばいい、と襟を解放された。

ありがとうございますって、お礼しか言ってないのに、土方さんにはわたしの言いたいことがわかったんだ。

沖田さんもだけど、土方さんはそれ以上に人の気持ちを汲み取るのが上手い。

それに…めちゃくちゃ口が悪いけど、優しい。

何か…可愛い。


思わず笑いが小さく漏れた。

「てめぇは…何がおかしい!」
「土方さんが可…」

慌てて口を閉じて。いくら何でも「可愛い」なんて言ったら本気で怒らせちゃう!

「乱暴なのにお優しいので、何だか頬がゆるみました」

言い直した。

「気色の悪ぃ事ぬかしてやがんのは、この口か!?」

「いだーい!!」

またほっぺたをつねられた。

恥ずかしかったんだな、土方さん。
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