輪廻ノ空-新選組異聞-
「知っている立場から、知らない側の無駄な動きをみてるのは、辛ぇだろぅ?だから、おめぇは強い。それに耐えるだけの強さがある」

わたしは首を振った。

「知ろうと思えば簡単に知る事が出来るのに、そうしない皆さんの方が強いです」

「それは違います、蘭丸」

と、沖田さんが口を開いた。

「私たちは最初から知らないから、知らないままが真だと思っているし、知らないでも生きていける。けれど…知っているんですよ、あなたは」

だから、偉いと。沖田さんは付け足して微笑む。

「ありがとうございます…」

私は涙を堪えて、笑顔で返した。


「で。おめぇの役目だ」

持ち場は屯所だ。屯所の警護に当たってもらう」

「探索は?」

「もうそんな悠長な事をしている暇はねぇ」

土方さんは腕組みをして続ける。

「その前に守護職会津本陣に援軍の要請に行ってくれ」

山崎には所司代に行かせた、と付け加えた。

「どこに来て貰うんですか」

わたしは驚いた。

援軍って…

軍、なんてと焦った。

「俺達には動ける者が三十いるかいねぇかだ」

これじゃあ足りないから、守護職と所司代の手勢も加えて、めぼしい場所を総ざらえにするか、逃げ道を塞いで貰うのだと言う。

「書簡を認めたから、これを渡しゃあいい」

頼んだぞ、と土方さんは私の肩を叩いた。

「わかりました。では行って参ります」

わたしは土方さんと沖田さんにお辞儀をして背を向けると、屯所を後にした。
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