輪廻ノ空-新選組異聞-
「主、奥を借りても構いませんか。稽古着ではいけませんので」

どうぞどうぞと言う店主の返事に、沖田さんは風呂敷包みを渡しに来た。

「全部着けて下さいね」

と言って差し出された風呂敷包みを受取る。

「うぉ!」

その余りの重さにバランスが崩れ、思わず踏ん張った。

「な、何でこんなに重いんですか?」

「鎖帷子が入ってますから。それも着けて下さい」

クサリカタビラって何?

疑問に思いつつも、店主の前で聞く訳にもいかず…。

薄暗くなってきている室内。広げた風呂敷包みには、襦袢から腰ひも、帯など一式揃っていて。綺麗に畳まれてはいたけど……おもわず匂いを嗅いでしまった。

「かび臭いような……」

なんて文句言えないし…!
とりあえず、男物は自分で着られるから助かった。

で…こ、これか!重いのは!

一番下に畳まれているもの。
鎖って、正に鎖だ!帷子に鎖状のものがびっしりと。これは…刀を通さないための防具なんだ…。と、さっきまで刀を選んでいたわたしはすぐに気付いて。

帷子の下には木綿の晒。
そっか、胸に巻いて、襦袢を着て、帷子着て、単衣を着たらいいんだよね?

うう…。重そう。苦しそう…。
でも…これもやっぱり文句は言えない。


結局…晒はうまく巻けなくて断念。
ノーブラで鎖を着れば、胸なんか大きくないし、バレないよね、と決めて晒は懐に隠して袴まで全部を着けた。重いけど……でも……この安心感…!

私は稽古着を畳んで、風呂敷に包んで表に戻った。
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