輪廻ノ空-新選組異聞-
わたしの時代では感じなかった気持ち。

目の当たりにする人の行動で、心から凄いって感動して。


そして尊敬の念を持つ。


生きるってこういう事なんだって。


「わたし、土方副長を尊敬します」


思わず言ってた。

沈黙があって、そして吹き出すのが聞こえた。

「唐突に何だぁ?熱でもあるんじゃねぇか」

「違…」

違います、と言いかけた言葉を遮られた。

「俺ぁ、そんな柄じゃねぇよ」
今だって、敵方とは言え、人をいたぶっている、と付け足した。

「おぃ、聞いたか!守護職に所司代、町奉行が軍勢で、てめぇらは袋の鼠なんだ!諦めやがれ!」

けれど古高は鼻で笑った。

「っへ、思う壺や!みな出張ってしまえ!!」

「どういう意味だ!」

土方さんは何度も怒鳴りつけながら、麻縄で出来た責め道具で体を打ちつけて聞いたけど、古高はそれ以上は吐かなかった。


土蔵を出て、わたしは暫く土蔵を見つめて立ち尽くしてた。

出て行けと言われた。

いくら鬼の副長でも、責めてるとこを見られたくねぇんだよ、とぼそりと付け足された言葉に胸が痛くなった。

「土方さん…」

自分でも知らないうちに呟いてた。

「土方さんに蘭丸をとられちまいそうだなぁ」

「わっ」

唐突に降ってきた言葉に体が跳ねる程驚いた。

振り返ると沖田さんだった。

「とっ、取られないですよ!!大体、土方さんの方がわたしをそんな目で見てません!!」

見当外れな心配しないで下さい!!と沖田さんを睨む。

「うーん、でもね」

と、沖田さんは苦笑を浮かべた。

「あなたと接する時の土方さんは、他のおなごとでは見たことがない程楽しそうなので」

あなたに惚れてるんじゃないかと、気が揉めますと言って更に苦笑を深める。

「それなら大丈夫です!!だってわたしが好きなのは沖田さんですから」

キッパリ言う。

「良かった」

漸く笑みを浮かべた沖田さんに安心しながら、その顔色が悪いのに気付いた。
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