輪廻ノ空-新選組異聞-
「沖田さん、体は本当に大丈夫ですか?」

手を伸ばして頬に触れる。

汗は相変わらずかいてない。

熱中症とかだと滝のような汗をかくしなぁ…。

「大丈夫です。蘭丸は心配のし過ぎです」

「沖田さんだって…!」

思わず言い返す。

口調とかは元気そうだけど…。あんまり心配しても…迷惑、かな。

わたしはこっそり心配する事にした。



しばらくして、再び道場に全員が集められた。

屯所の警備にあたる隊士以外全員出動する事になった。

とりあえず、武装して祇園の会所に詰めて浪士達を牽制しつつ、守護職の会津、所司代の桑名などの軍勢を待つ事にしたという土方さんの説明の後、齋藤さんや、永倉さん、藤堂さん、原田さん、みんな表情を引き締めて、出陣の準備に出て行った。

三々五々会所に集合する、という下知だったんだけど…

それは、祇園祭の宵山を迎えて賑わう市民を驚かさない為、また、浪士を刺激し過ぎない為だとのこと。

わたしも一気に緊張を高める。



監察方の私室に戻って押し入れを開く。

先日水没させてしまった愛刀、国清の代わりに頂いた刀、加州清光。

それを出す。

沖田さんが、ちょっと振って、ものすごく良い刀だと絶賛した。実戦に則した絶妙な長さ、重さ、角度、拵えなんだと。

国清は使いなれていて、それと比べれば愛着という点でも、馴染む点でも、敵う刀はないけれど、この加州清光はとても良いと。

わたしは…修理に出していた国清を受取りに行った帰り、この清光を持って八坂神社に行った。池田屋事件では、この刀を沖田さんに持って貰いたくて。浄めと、御守りの願いを込めて、御祓いをしてもらったんだ。

剣術を芸事といえば怒られるかも知れないけれど、武芸とも言うから、芸事に御利益のある八坂神社はぴったりだって思った。

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