輪廻ノ空-新選組異聞-
「生涯…終生、離しませんよ」
「…………は?」
怒ったみたいな気迫で怖いぐらいだったのに、言われた言葉が余りに…余りに、甘くて。
間抜け面になってたと思うけど…沖田さんが益々真っ赤になるから、わたしも顔に血がのぼった。
「真の本気で、離しません」
かすれたような、必死な声に更にわたしの熱も上がる。
な、何か言わなきゃ…!
嬉し過ぎて。
恥ずかし過ぎて。
「そっ、それはこの前嵐山の出合茶屋でわたしが宣言して、誓ったじゃないですか!」
「勿論、それも真で本気です!!」
相変わらず怖い顔でわたしを見つめる…と言うか睨む沖田さんは続けた。
「その時以上にあなたが愛しくなっちまったんです」
あの時も本気で想いを交わしたけれど、消えない葛藤はくすぶっていたと。
「あなたはいつも私の命の危険を案じてくれます。確かにそうです。けれどあなただって、この世に突然降ってきたみたいに、ある日突然私の眼前から消えてしまうかも知れない」
…あ…つ。
「ならば、突然別れがきても互いに辛くならないようにしなくてはいけないのではないか、と…」
躊躇いがあったし、葛藤があった。
「己が想いを抑えていました」
必死で、と沖田さんは言った。
「でも…その…。あなたが川でこともを助けた時、羽織だけ残していなくなったあなたが…本当は自分の所に帰ってしまったのではないかと…」
身を引き裂かれそうな程心配した。それをまざまざと感じて、もう引き返せない程あなたを愛してしまったのだと分かったけれど…
「さっきの一言は…余りに愛らしくて、愛しくて…」
もう抑えるのはやめにします。もう知りません、と沖田さんはきっぱりと宣言した。
「何があっても、私は…蘭子さん。あなたを離しません」