輪廻ノ空-新選組異聞-
「沖田さん…」

胸が詰まった。

こんなにも真剣に想ってくれていたんだ。

わたしは…毎日必死で、生活するのに夢中で、沖田さんという最高の人がいてくれて、浮かれてただけじゃないか。

現代に帰っちゃったらどうしようなんて、考えてなかった。

ずっと幕末にいるんだと思ってた。

でも沖田さんは、冷静にそこまで考えて想っていてくれた。

嬉しくて嬉しくて、

幸せで幸せで、

何より

ありがたくて。

愛されるっていうのは、こんなに大きな事なんだ。

全てが満たされることなんだ。

知らなかった。

家族の愛情とはまた違う、圧倒的なぬくもり…。



「ありがとうございます…っ」

漏れそうになる嗚咽を耐えて、何とか言った。

「本当にありがとうございます」

こんなわたしなんかを…そんなにまで…

と言ったら、沖田さんはすかさず言った。

「なんか、ってなんですか?」

勝ち誇ったように。

「蘭子さんだからこそ、ですよ」

「…っ」

やり込め返された!


「言いたくなるでしょう?こんな自分なんかを、と。勿体なくて」

「はい…」

こくりと頷いて返事した。

「でも、嬉しくて、幸せで堪らない」

「はい」

「もう、知りませんからね」

「はい!」

わたしは沖田さんに抱きついてた。


大好きで
大好きで


大切で
大切で


「先が不透明だからこそ、いつも全力で慈しみ、育み、大切にしたい気持ちです」


わたしはうまく伝わるか分からないような言葉だけど言って、続けた。

「愛してます」

「私もです」

愛してます、と耳元で囁くような、けれどキッパリとした言葉に、わたしは抱きしめる腕に力を込めて。

それに応えてくれた沖田さんと更に深く抱き締めあった。
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